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更年期と加齢のヘルスケア2010年の話題

小山嵩夫クリニック院長  小山 嵩夫 ※

更年期と加齢のヘルスケア領域において2010年もいくつかの動きがあり、主なものについてその要点とコメントを述べたい。

1. ヘルスケアと医療の違い

 2010年11月7日第9回当学会学術集会“更年期からのヘルスケアと更年期医療との違いを明確に認識しよう”のメインテーマで当学会の方向性を印象づけ、ヘルスケアと医療がこれまであいまいであったものが明確に認識されるきっかけとなった。学術集会自体は盛会であったが興味深いことに参加者の構成に大きな変動がみられた。即ち更年期を主として担当しているとされる婦人科医参加が減りその分看護、薬学、栄養などいわゆるコメディカルの人達の参加が増加し、参加人数自体はほとんど変化がないものの内容的にはヘルスケアに関して討論が活発化した。日本更年期医学会は参加者の90%近くが婦人科医であるが、当学会の第9回学術集会では婦人科医の参加は10%未満であり、更年期を扱うこの2つの学会の方向性、関心、研究方法、対応などの違いが認識された。
 わが国の医療施設ではその言葉が示す様に医療が中心であり予防的内容、いわゆるヘルスケアが実践しづらい。また、医療保険制度が予防的な内容の実施をほぼ禁止しているのも大きな理由であろう。しかしいわゆる予防医療は大きな領域であり、今後の発展が期待される。

2. HRTの投与期間5年について

 2009年に日本更年期医学会、日本産婦人科学会からホルモン補充療法ガイドラインが発表された。そのなかで投与期間5年以内は乳癌発症率の増加などの副作用が少ないため、更年期障害などの場合は5年以内はほとんど問題はないとしている。これらの情報からHRTは5年以内とのイメージが先行し、臨床の現場では5年で終了している場合も多い。骨量維持、日頃の生活のQOL維持、向上の場合は5年以上投与も別に何も問題もない。但し、副作用チェックのための検診は必須である。5年で中断すれば、その時点から自律神経系の不安定、骨量減少、動脈硬化の進行、皮膚粘膜の乾燥症状などが再び出現する可能性が大きいわけであり、中断の場合はむしろそれらについての情報提供は欠かせない。

3. 女性の健康相談員の育成について

 2009年秋に民主党の事業仕分けにより厚生労働省の女性の健康支援事業は中止となったが更年期からの女性の健康に関しての啓発活動の重要性が減じたわけではない。当学会のメノポーズカウンセラーの活動はまさに、この領域をカバーするものであり、今後もこの運動を継続していくことが重要である。
更年期の不定愁訴の解説、30歳代後半からの女性ホルモンを中心とした理解が女性の生涯にかけての健康に役立つこと、癌検診のほかに骨粗鬆症、動脈硬化、物忘れ、尿もれ、皮膚の乾燥やホルモン補充療法についての正確な知識、薬剤のみでなく予防医学的立場からの生活習慣の重要性、サプリメント、漢方などの知識など必要な事柄は多い。これらについて公平な立場からの解説、相談を広く国民レベルで実施することは個人個人にプラスするのみでなく、社会、国家レベルで大いに貢献することを国民に知ってもらえる努力はこれからも必要である。

4. メノポーズカウンセラー認定事業について

 この事業は毎年順調に伸びてきており、2011年2月でカウンセラーの数は270名余りとなっている。わが国の医療施設は検診と治療が中心で健康管理(即ち、現在元気な人達が可能な限り元気さを維持する)的な面はあまり得意とはいえない。検診、治療への助言とともに正確な医学的知識に基づいた健康管理面への積極的参加がメノポーズカウンセラーには期待されており、貢献可能の領域は広い。
 カウンセラーに認定された職種をみると医師が約30%、コメディカル(看護、薬剤、栄養、運動など)約60%、その他(何らかの形で更年期女性と関係のある人達が多い)約10%で多くの職域にまたがっていることがわかる。現在はまだカウンセラーの業務を一般に理解してもらうことが基本であるが、将来はヘルスケア業務の一部として広く社会に受け入れられることを期待したい。

5. いわゆる気の病について

 女性(とくに更年期世代)は自律神経失調症をはじめいわゆる“気の病”にかかりやすい。症状は臓器による疾患と同じ症状を訴えるため、臓器別の検査を行い、病因を同定できず、対応に苦慮することも多い。
 この様な場合はスクリーニングとしての簡単な検査の後は、十分に話を聞き、理解を示すことで症状が改善されることが多い。30歳代女性の不定愁訴、更年期障害、老年期のうつ、自律神経失調症などは典型的なものである。しかしこの気の病の診断とその適切な対応は自然科学中心の現代医療からみると不得意な領域といえる。まず十分に話を聞く医療環境が我が国では非常に貧弱であり、臓器別の検査で異常が認められなくかつ症状が続く場合は“様子をみましょう”又は“対症療法の積み重ね”、“安定剤投与”などが主なものであり適切な対応とはとてもいえない。現在の西洋医学の陥りやすい短所として、西洋医学の枠組の中にすべてが存在すると仮定しているため、その枠組をはずれた場合は対応がほとんどできない点にある。気の病はまさにその枠組からはずれたものがかなり存在している可能性がある。
 2010年8月24日に日本学術会議会長談話として“ホメオパシー”排除の談話が発表された。2009年10月、脳内出血などの予防のためのビタミンKシロップを投与せずにホメオパシーによるレメディ(ほとんどがただの水といわれている)を投与された生後2ヶ月の女児が硬膜下出血で死亡し、その担当助産師が訴えられた事件などが参考として出された談話だと思われる。今回の様に自然科学で実証されたことを採用しないで、事件が発生したとすれば、レメディ投与などは論外であるが、このホメオパシー事件などは多くの問題を含んでいる。ホメオパシーを伝統医学といえるかどうかは別問題として、いわゆる現代医学の域を超えたものに対して現代医学の範囲内だけの知識で判断を下すことは問題がある場合も考えられる。例えば現代医学の枠組内で異常がみつけられない場合、“気のせい”“様子をみましょう”とするのも判断ミスの可能性もあり、今回の事件は大きな問題の提起をしているともいえる。

6. おわりに

 2010年は更年期と加齢のヘルスケア領域において、ヘルスケアと医療概念の違いが明確に公に討論された最初の年といえる。またこの領域はいわゆる臓器別の対応とともに全体をみていわゆる気の診断(話を十分に聞くことなど)も重要であることが確認されてきている。
 ヘルスケアは医療制度上、気の診断は現代医療の不得意な部分であり、ともに今後は困難なことも多く予想されるが、これらの領域の着実な前進は多くの人々の健康維持に確実に貢献することが期待される。

【参考文献】

1. 日本産科婦人科学会・日本更年期医学会:ホルモン補充療法ガイドライン2009,
  日本産科婦人科学会事務局,東京,2009年
2. 更年期と加齢のヘルスケア学会:特集 女性の健康づくり推進懇談会の意義を考える,
  更年期と加齢のヘルスケア8:301‐323,2009
3. 更年期と加齢のヘルスケア学会:更年期からのヘルスケアと更年期医療との違いを明確に認識しよう,
  第9回更年期と加齢のヘルスケア学会学術集会抄録集
  2010年11月7日 都市センターホテル,東京
4. 日本学術会議:「ホメオパシー」についての会長談話,2010年8月24日

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