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更年期情報

“2008年の話題”

小山嵩夫クリニック院長
小山嵩夫*

 2008年も更年期と加齢のヘルスケア領域において、少しずつ動きが出ている。研究会とは直接関係はないが、社会の動きとして、年金記録の問題、後期高齢者医療制度、女性の健康力運動の発足、HRT再評価の動き、更年期からのヘルスケア外来への関心の高まりなどもあげることができる。
 当研究会も発足後7年目に入り、順調に成長してきている。会員の希望もあり、今秋より学会移行が予定されており、これらの経過についても述べたい。

1. 国際閉経学会からのHRTについての指針

 HRTについての指針は、北米閉経学会(NAMS)のものがよく知られているが、国際閉経学会(IMS)も2007年に機関誌Climactericに発表した(Climacteric10:181-194,2007)。各テーマ毎に14頁に渡って解説したものであるが、ポイントについて述べたい。
 a) HRTは更年期以後のヘルスケアにおいて、食事、運動、喫煙、アルコールの習慣について配慮するのと同じ位の重要性をもって考えるべきである。
 b) HRTは症状の改善のためか又は長期的に用いて疾患の予防又はQOLの改善のために用いるのかを決め、その投与計画については個々の症例毎に十分に患者と相談して決める。
 c) HRTは投与するエストロゲンの種類、投与法によって、データは非常に異なることを知っておく。
 d) 45歳未満で両側卵巣剔出した場合は、50歳迄は無条件でHRTを行う。
 e) HRTのリスクを説明する場合は、何%増加するといういい方をしてはならない。必ず絶対数の増加で説明する。(WHI報告の乳癌を例にとると、HRTを5年以上実施した場合、対照群は1万人につき、1年間に30例発症したが、HRT投与群では8例増加して38例となった。これをわが国にあてはめると1年間に1万人につき対照群は8例発症するが、HRT投与により3例増えて11例になるということ)
 f) HRT投与中は少なくとも年に1回以上はその目的を確認し、同時に全身の医学的検診、生活習慣の評価などを実施する。
 g) HRTの投与期間に一律な制限を設けてはならない。投与期間やいつまで投与するかについては個々の症例毎に検討して決定する。
 h) 投与量は有効最少量を用いるが、長期投与における骨密度、心臓血管系への効果については、データはまだ十分とはいえない。
 i) 閉経後女性における男性ホルモンの投与は、女性ホルモンとともにQOLおよび性機能の改善に有望であり、適切に用いることが期待される。
 j)  閉経後数年以内、少なくとも50歳代でHRTを開始し、長期投与した場合は骨密度の改善、心臓系疾患の予防、もの忘れの予防、糖尿病の発症率の低下、大腸がんの発症率の低下などには有効である。60歳代以後に投与を開始した場合は50歳代より効果は減少し、その後も長期的に投与した場合の効果については確立されていない。
以上がポイントであるが、50歳代からのHRT投与はきちんと管理されていればメリットの方がデメリットよりはるかに多いことを述べている。わが国では更年期からの生活習慣の重要性は早くから指摘され、対策がとられているが、HRTの重要性についてはまったく気づかれておらず、IMS声明との認識の隔たりは大きい。

2. 更年期からのヘルスケアの概念の普及について

 2007年より厚生労働省の音頭取りのもと、女性の健康を支援するプロジェクト“女性の健康力”運動がはじまっている。このなかの重要な項目として更年期および閉経後の女性が元気に生きることが入っており、生活習慣の見直しとともにどの様な対策がとれるか各領域の専門家が考える段階に入っている。
 更年期外来がわが国に普及しはじめてから20年近くが経過しようとしているが、その内容は更年期障害治療外来、骨粗鬆症外来で大部分を占めているのではないかと思われる。更年期外来を健康保険制度内で実施しようとしているため、疾患の治療外来となってしまっているが、更年期からのヘルスケアはその様なものではなく、本質は予防医療であり、現状の分析と共に、生活習慣、カウンセリング、HRTなどを中心とした総合的なヘルスケアである。即ち現在それ程困っていないが、この現状を維持し、生きている限りは自分のことは自分で行ない、決断し、可能な限り他人の援助を少なくしていくためにはどうしたらよいかを健康面から考えていくことである。
 こうした更年期からのヘルスケアの概念は欧米先進国の間では一般的なものであるが、わが国ではほとんど知られておらず、実施もされていない。しかし、最近では医療機関は病人の治療のみでなく、ヘルスケアも行なって欲しいという要望も少しずつ出はじめている。このたびの“女性の健康力”運動も予防医学的な立場からの部分も多く、国民の意識の変革に一石を投じることと思っている。
 本研究会のメノポーズカウンセラーは現在110名余り認定されているが、その第1の役割はこの概念を国民に啓発していくことであり、今後の活躍に期待したい。

3. 学会移行について

 本研究会の学会移行を2008年11月24日の総会を経て、同日より移行することが2008年初めの世話人会で承認された。
 会の組織、毎年の学術集会、年2回の機関誌の発行なども軌道に乗っており、技術的にはとくに問題はなく、予定通り実施されるであろう。
 学会への移行は単に名称を研究会から学会に変えるだけのものともいえるが、社会的には大きな意味を持つ。即ち、会の運営などがよりオープンになる。学術集会、機関誌への参加、投稿の増加が予想される。会の社会的な認知がすすみ、それに伴い社会的な責任もより重くなることなどが考えられる。

 本研究会は半分以上の会員が医師以外の会員、即ち看護師、薬剤師などであり、この領域で婦人科医中心の日本更年期医学会とは会員構成で大きく異なっている。婦人科医の間では更年期医療は人気がなく、そのためか、この領域は10年以上に渡って足踏み状態が続いているといわれる。
 本研究会は、緩やかな発展を続けており、更年期のヘルスケアに関心をもつ人達も少しずつ増加してきていることから、異なった角度からこの領域に光を入れることにより、少しでも更年期、閉経女性のQOLの向上に役立てばと考えている。

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