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更年期情報

“更年期と加齢のヘルスケアに期待されること”

更年期と加齢のヘルスケア学会理事長
小山嵩夫*

 2002年4月更年期と加齢のヘルスケア研究会として発足し、毎秋学術集会、機関誌『更年期と加齢のヘルスケア』を春と秋に発行し、今号で第7回を数えるにいたった。2006年にはメノポーズカウンセラー育成と認定を主たる目的として、研究会もNPO法人化した。7年目に入り会の運営、機関誌の発行も軌道に乗ってきたため、2008年11月24日より名称を学会とした。  ここでもう一度学会の目的、今後の活動方針などについてまとめてみたい。

1. 活動目的

 更年期と加齢の領域はわが国においては、これまであまり関心をもたれてきた領域とはいえない。更年期障害は不定愁訴が中心であり、西洋医学的諸検査もそれ程異常が認められているわけでもなく、わが国の医療機関で実施されているいわゆる病気の治療の枠内に適合しづらかったともいえる。加齢現象としてあきらめられていた領域ともいえるが、疾患として判断される前に予防医学的な見地からの工夫が、更年期から老年期の生活の質(QOL)の改善に大いに役立つことも以前から知られていた。  この様な現状にかんがみて、更年期と加齢についての正確な知識を広めることと、予防医学を中心としたこの領域への貢献により、更年期以降のQOL維持改善をこの学会の目的とした。

2 /会員構成

この領域で似た様な学会として日本更年期医学会があり、1986年より活動している。ただこの団体は90%近くが婦人科医であり、予防医学より、女性ホルモン(エストロゲン)減少に伴う諸疾患への対応を中心として、更年期障害、骨粗鬆症、脂質異常などの薬物治療が中心であった。 更年期と加齢のヘルスケア学会の目的は予防が主役であり、多くの人達の参加のもとに、更年期から老年期のQOLの改善を目指している。日本更年期医学会より範囲が広く、活動目的がかなり異なっていることが理解されると思う。 本学会の目的からして参加が期待される人達としては看護、薬学、栄養、運動、カウンセラー、この領域に関心のある一般の人達、医師などが考えられる。本学会の現在の会員構成は3分の1が看護系、3分の1が医師系、残りが薬学、栄養、その他の人達となっており、多くの領域からという目標は達成されている。北米閉経学会(North American Menopause Society)は50%以上の会員がコメディカルの人達であり、わが国の日本更年期医学会(Japan Menopause Society)とは構成メンバーが非常に異なっており、どちらかといえば本学会の構成メンバーに近いといえる。

3. これまでの活動

 正確な知識、情報を医学関係者、国民に伝える啓発活動として学術集会、年に2回のプレスセミナー、メノポーズカウンセラーの認定および研修会、ニューズレターの発行、機関誌『更年期と加齢のヘルスケア』の年2回発行などを実施してきた。現在事業としては順調に推移してきているが、2008年の学会移行により、活動範囲がより広がることを期待している。7年間の活動により、コメディカルや一般の人達がこの領域に参加し発言してきたことは非常な成果と考えている。  臨床の現場での本学会の活動は現在限られたものとなっている。大きな理由としては、予防医学が現在の医療保険制度ではほとんど認められていないことと、また、医療保険制度に認められていないことを臨床の現場で行うことは、わが国ではほとんど不可能に近いこともあげられる。また医療現場での医師の裁量権が非常に大きいこともコメディカルによるこの領域への参加を妨げている理由の1つと考えられる。  社会(国民)への啓発活動は医療現場とは異なり、この7年間でかなりの成果をあげてきている。プレスを通しての国民への正確な情報の伝達、機関誌『更年期と加齢のヘルスケア』による論文発表、メノポーズカウンセラーなどによる保健事業などへの参加(セミナーなどでの講師)、更年期相談室での相談業務など、これからも少しずつ着実に続けていきたいと考えている。

4. 今後の展望

 わが国も高齢社会を迎え、ヘルスケアについても医療と同時に予防の重要性が認識されはじめている。予防のための正確な知識を知ってもらい、生活習慣などを中心とした対策となるため、従来の、病気になるのを待って検査・手術・投薬などを行う医療とは全く異質の領域ともいえる。しかし、予防を中心とした考え方が国民の将来のQOL、医療経済面などからは圧倒的に有利であることは自明であり、予防医学を普及させる努力も本学会には求められていると考えている。

 予防医学が重要視されるにつれ、当学会もわが国の更年期以降のヘルスケアへの参加など、広い視野からの発想が求められている。更年期と加齢の領域は従来の医療ではカバーしきれない事柄も多く、食事・運動などは当然として、経済、心理、社会環境的な領域からの参加は必須といえる。これからもより多くの領域の人達の参加とともに、少しずつ成長していくことを期待したい。

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