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ホルモン補充療法は卵巣癌を増加させるのか?

小山嵩夫クリニック院長
小山 嵩夫

 2007年6月上旬、日経メディカルオンラインで、“ホルモン補充療法(HRT)で卵巣癌リスク上昇”という刺激的な見出しで、2007年4月19日Lancetに発表された“Million Women Study(MWS)における卵巣癌について”1)の論文の和文の解説記事がFaxで送られてきた。勝手にFaxで送りつけるとは変な情報手段とは思ったが、ちょうど本誌の編集委員からのコーナーで書いた様にこの論文を読んだばかりであったので、読んでみた。
 まず、情報は卵巣癌が20%増加を強調しており、HRTに不安を与える調子で書かれており、自分が原文から得られた感じとは大きく異なっていた。編集委員からのコーナーで書いたが、この論文に対する自分の見解は以下の通りである。
 1)MWSという様に対象者が非常に多く、個々の症例の背景もかなり異なっており、どの様な基準で分析したとしても、20%位の差で結論を出すのはかなり問題がある。1)2)
 2)米国の大規模HRT臨床試験WHI報告ではこの様なデータは得られていない。
 3)かりに20%増加が正しいとしても、卵巣癌の発生頻度からみると、1万人につき年間1人増えるかどうかという問題であり、臨床的には一般の検診で対応可能範囲である。
 4)以上よりこのレポートは、現行のHRTの臨床になんら影響を与えるものではない。
メディカルオンラインの和文情報と、以上述べた私の見解とは大きく異なっていることが理解できたと思う。しかし、原文を読む機会もなく、HRTについてそれ程知識のない人達は、この和文情報を信じることも多いであろう。HRTの解説で、“副作用を強調したい場合は増加率をあげ、実態を理解してもらいたい場合は実際に発生した症例数を説明しなさい”といわれているが、今回のケースもこの例えによくあてはまっている。情報はきちんとしたところから得ることが大切であり、関心を持った場合は、原文を読んでから判断することが基本であることを感じた。

1)Million Women Study Collaborators : Ovarian cancer and hormone replacement therapy in the Million Women Study. Lancet , published online April 19,2007.
2)Farmer R : The Million Women Study - is it believable ? Climacteric 8 : 210,2005
3)Pine A , Sturdee D , Birkhauser M : Response to the Lancet paper on ovarian cancer in the Million Women Study. Pressstatements of the International Menopause Society , April 18,2007(Newsletter 70,page4,April 2007)

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