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ホルモン補充療法と肺癌死亡率の増加

小山嵩夫 更年期と加齢のヘルスケア Vol.9-1 pp147 2010

小山嵩夫クリニック  小山嵩夫

 2009年10月10日号のLancetにWHI試験の分析から、投与期間の5.6年およびその後の2.4年間を追跡調査し、ホルモン補充療法(HRT)により年間肺癌死亡率が71%有意に増加したことが発表された(Chlebowski et al,Lancet 374:1243-1251)。この論文の内容はマスコミでも取りあげられ(全国紙の新聞、NHKなど)、現在もインターネットの医療ニュースなどでも掲載されているため、外来で質問をしばしば受ける。
 マスコミでこれだけ話題になりながらHRTの専門家の間ではこのことが話題になることはそれ程多いわけではない。その理由について触れてみたい。
 この論文が発表された直後に北米閉経学会(USA、カナダ)から専門家のコメントが出されたこと(First to know, October 8, 2009)がその理由であろう。
 P.Yang教授(メイヨークリニック、疫学)はこの研究はHRTの長期投与の臨床試験であり、肺癌への影響をみるための試験ではないため臨床計画に問題がありすぎるとしている。以下が彼のコメントである。1)投与開始時にどれ位の人が肺癌であったのかの検査がされていない、
2)喫煙は大きな影響を与えることがわかっているがこの面の評価がなされていない、3)転移性肺癌についても投与開始時正確に診断されているわけでもないのでデータの評価は非常に難しい。
 Dr L.Speroff教授(オレゴン大学産婦人科)は次の様にコメントしている。主として転移性非小細胞肺癌による死亡が増加したとのことであるが、投与前に肺癌関係の評価がほとんどなされておらず、この論文はこれまでの多く研究結果を覆すもので、挑発的で人を混乱させるものだとしている。
 これまで多くの論文は観察研究ではあるがHRTは肺癌によい影響を与えるとしている。Dr.Kreuzer M(Int J Epidemiol 32:263-271,2003)およびDr Olsson H(Obstet Gynecol 102:565-570,2003)らは喫煙者においてもHRTはよい影響を与えると報告している。
Nurses' Health Studyでは両側卵巣剔出を行ないエストロゲン投与をしなかった場合は肺癌による死亡が増加するとしている(ParkerWH,Obstet Gynecol 113:1027-1037,2009)。
 これまでの多くの肺癌とHRT(今回の論文も含めて)の論文をまとめてみると1)喫煙者で
60歳以後はじめてHRTを開始した場合は、すでに肺癌にかかっていた場合はその成長を促進する可能性がある、2)WHI研究、その他の多くの研究は60歳以下のHRTは肺癌に対し予防効果があることを示している。
 Dr Yang、Dr Speroff両教授の適切なコメントが直ちに北米閉経学会から発表されたため、このコメントを知っているHRTの専門家はそれ程話題にしないのではないかと思われる。

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