女性の健康管理クリニック 小山嵩夫クリニック

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更年期女性と医療経済

小山嵩夫 更年期と加齢のヘルスケア Vol.5 pp300-301 2006

今号のメインテーマが医療経済なので、更年期女性を取りまく医療環境について経済面から気がついたことを述べてみたい。

■ ドクターショッピング

 更年期女性が症状毎に各科を転々とすることはよく知られている。理由としては女性ホルモン(エストロゲン)の低下により、自律神経系が不安定になり、あらゆる身体の部分について、いわゆる不定愁訴を訴えるからである。ここで更年期女性の場合は、自律神経系をおさえれば症状の緩解が得られるわけである。しかし、現在の医療システムでは更年期障害が疑われるので、更年期外来へ行ってくださいという医師は非常に少ない。理由としては、1)更年期という発想がない、2)患者が訴えた症状について、まず自分の専門領域の疾患であるかどうかについての検査を行なう、3)ひとまず訴えた症状に対する一般的な薬剤を処方して、様子をみる、4)再診時において、更年期障害の場合は、それ程所見は認められないが、初診時に処方した薬剤によりある程度症状が治まってきているので、そのまま処方を続ける、又は残っている症状に対して追加処方をする、5)そのまま再診、処方、時々の検査を続けていくなどの過程を経て、いつの間にか日時が経過することが多い。わが国においては、診察にあたってあらかじめ予習をしている医師は非常に少なく、1回の診療時間が3~10分位のことが多い。この様な状況であれば、原因の探索や、長期的な治療方針を考えている時間的余裕が少ないのも当然であろう。結果として、患者は満足が得られず、残った症状の科を受診することになり、この繰り返しがドクターショッピングといわれる現象を作り出している。

■ 3分診療、出来高制

 この言葉も医療の現場ではよく聞き、又医療経済面より考えれば、本質をついているともいえる。現在の医療は検査、投薬、処置、手術などに報酬が支払われ、いわゆる患者さんの話をじっくり聞いて、原因を考え、長期的な治療方針を考えることなどには報酬は支払われない。また、実施したことに支払われ、その診療行為が妥当かどうかまでは要求されていない(出来高制)。従って、それ程深く考えもせずに、まず、検査、投薬、手術などを行なってしまう現実がある。皮肉な見方をすれば最小限の検査で適切な治療を行い、短期間で治してしまうよりも、保険で査定されない範囲でいろいろな検査を行ない、各種の対症療法的な薬剤を投与し、治療をだらだら続けた方が、医療機関は経済的に安定し、潤うシステムが存在している。
 更年期女性の不定愁訴は、この様な医療制度からみると、適切な医療を受けた場合と不適切な医療を受けた場合の差が歴然と出る領域といえる。すなわち、十分に話を聞き、更年期障害と判断し、ホルモン補充療法、漢方薬、カウンセリングなどを実施すれば、短期間で著明な改善をみるのが普通であるが、症状毎の対症療法を実施すれば、症状はほとんど改善されず、治療もだらだらと長期化する。これを各科毎に繰り返せば、時間、費用とも大きな負担となる。ここで大きな問題点として考えなくてはならないのは医療者側から見た場合、だらだらと長期化し、各科にまたがった場合の方が利潤が圧倒的に大きいことであろう。この様な事実が存在する限りは適切な更年期医療を望むことは、制度の面からも難しいといわざるを得ない。

■ 正しい更年期医療、ヘルスケアの普及を

 わが国で適切な更年期医療、ヘルスケアの実現しない理由として医療経済の問題が大きな要因の1つであることは理解できたと思う。しかし、医療制度が変わらないからとして現状のまま放置することは無策であり、可能なことから実現していくことが望ましい。
 40歳代後半から60歳代前半までの女性は、まず更年期外来を受診し、全身的な立場から考え、診断するシステムを考えたい。簡単なスクリーニングにより、器質的な疾患が除外された場合は、更年期障害が疑われ、その治療を開始する。その際の十分な聞き取り、カウンセリングに対しては十分な報酬を支払う(現状では自費)。この十分な聞き取り、カウンセリングを中途半端にすれば、これまでの不十分な更年期医療になってしまうことが予想される。充実したものに変えていくためには、困難なことではあるが、医療関係者の合意のもとでの協力が必須である。ここでの十分な聞き取り、カウンセリングについては医師のみでなく、教育、経験をつんだコメディカルスタッフの参加も期待したい。
 適切な診断、治療を行なえば更年期障害の治療は1~2年で終了するであろう。しかしわが国において、更年期障害で悩み、がまんしている女性達は、数100万人以上存在している。更年期外来に期待されるところは大きい。また、更年期障害のみならず、閉経前後から閉経後、死ぬまで元気に生きることを支援する更年期からのヘルスケアも重要であり、更年期医療、ヘルスケアが、大きく転換していくことが予想される。

 更年期女性と医療経済について、ここではほんの一部についてふれたのみであるが、更年期女性のヘルスケアの向上のためには、これから多くの人達がこの問題にも関心をもっていくことが必要であろう。

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